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小論文 ニームの木は地球を救う【抄訳】 A Tree For Solving Global Problems 出典:National Research Council (USA) 著者:Eugene B. Shultz(ワシントン大学教授)
1.総論 ニームの原産地はインドとミャンマーで植物学的にはマホガニーの仲間である。 高木で樹形は樫の木のように広がり、ニセアカシアに似た香りの蜜を持つ白い花をつける。 葉はクルミやトネリコに、実はオリーブに似ている。 落葉せず一年中緑陰を提供してくれるので、熱帯のインドでは昔から裏庭や市場、道路沿いに植えられてきた。
インドのほか西アフリカにも移植され、緑陰の提供や薪の供給源、さらにマラリア治療薬として利用されており、ソマリアからモーリタニアにいたる国々ではサハラ砂漠の南下を食い止めるのに役立っている。
このようにニームは条件が悪い場所でもたくましく育つ丈夫な木であるばかりでなく、特筆すべき特徴は農業や家庭での害虫駆除に優れた効力を発揮することである。 実際、昆虫学者の中には「ニームは安全な天然殺虫剤の新時代をもたらすだろう」という人もいる。
ニームの実や葉からの抽出物は多くの種類の害虫を攻撃するが、人や動物や益虫には害を及ぼさない。 生物分解性があるので作物や土壌に残留することはなく、害虫に遺伝的な抵抗性を生じることもないので、化学殺虫剤に代わる理想的な殺虫剤ということができよう。
ニームの優れた害虫駆除剤になるということは昔から知られており、インドの農民はニームがバッタの周期的な襲来を防ぐことを知っていた。 このことが世界的に知られるようになったのは1959年で、ドイツの昆虫学者ハインリッヒ・シュムッテラーがスーダンで空を覆い尽くすバッタの大襲来のなかで、唯一被害を免れたのはニームだけであったのを目撃したのであった。
さらによく調べてみると、バッタは群をなしてニームに留まるが、食害をせずに離れてゆくことが分かったのである。 それ以来、その理由を明らかにするための研究が多くの研究者により続けられてきた。
これまでの研究の結果、ニームの抽出液は200種類以上の昆虫、ダニ、センチュウ、菌類、バクテリアおよび数種のウィルスに作用することが明らかにされた。
例えば、インド、イスラエルおよびアメリカでは棉(わた)やたばこの害虫に、トーゴ、ドミニカおよびモーリシャスではキャベツの害虫に、フィリピンでは米の害虫に、ケニアではコーヒーの害虫の駆除に成功した。 さらに貯蔵中のトウモロコシや豆での試験の結果、10ヶ月間防虫効果を発揮したのである。
アメリカ農務省の実験では、大豆の葉の半分にニームエキスを散布してマメコガネの入った容器に入れたところ、散布した葉片は無事だったが、散布しなかった葉片は48時間以内に葉脈を残してすべて食い尽くされてしまった。
またオハイオでのほ場試験の結果、ニームエキスを散布した大豆は14日間何も被害を受けなかったが、散布しなかった大豆は多種多様な害虫に一晩のうちにやられてしまったのである。
ニームは複数の活性成分を含んでおり、状況により様々な働きをする。 化学的にはステロイド化合物の遠い親戚にあたり、炭素、水素、酸素だけで構成されており、化学殺虫剤に見られるような塩素、硫黄、窒素といった元素は含んでいない。
ニームエキスの害虫に対する作用はユニークなもので、害虫に対して直接殺虫効果を現わすのではなく、害虫は摂食や変態や繁殖ができなくなって害を及ぼすことができなくなるのである。
アザディラクチンはニームエキスの主要な成分であるが、幼虫の脱皮や変態を抑制する作用があり、幼虫はサナギになれずに死んでしまう。 また強力な摂食阻害効果があるので、幼虫は餓死してしまう。
サラニンもニームエキスの成分であるが、害虫に対して忌避作用があり、ある種の害虫に対しては化学薬品の「deet」(diethyl toluamide)より忌避作用が強い。 「deet」は家庭用のほとんどの防虫剤に含まれている成分である。
ニームエキスには主要な成分が4種類あり、その他20種類もの成分を含んでいるため、このブレンドは驚異的な性質を持っている。 すなわち単一の化学殺虫剤では連用により害虫に抵抗性を発達させるが、ニームエキスでは各成分がそれぞれ別個に害虫の作用点に働くため、遺伝的な抵抗性のい発達はみられていない。 ある実験ではコナガを35世代続けてニームエキスにさらした後でも、感受性の変化はみられなかった。
もう一つのニームエキスの重要な性質は、その成分が植物に吸収され植物体の全体に浸透移行することである。 これはまた希釈液を土壌に施用する方法でもよい。 成分は根から吸収され、茎や幹を通って植物の上部に移行し、植物の内部から保護するのである。
実際に米、小麦、大麦、サトウキビ、棉(わた)、トマト、菊などで試験の結果、この方法で作物を10週間にわたり害虫の被害から守ることができた。
この方法では成分は植物の内部にあるので、降雨で洗い流されることはなく、ミツバチや天敵に影響を与えることもなく、また新しい伸長した枝葉でも害虫の食害から保護される。
さらにニームエキスの重要な性質は、恒温動物に対してほとんど毒性を示さないことである。
事実、ガーナのアクラ平原ではニームの果実が鳥やこうもりの主要な餌となっており、果実を食べた鳥やこうもりが中毒した様子は全く見られない。
またニームエキスを塗ったネズミは普通のネズミよりも食欲が旺盛になり体重が増える。
ニームエキスは発ガン性物質を検出するエームズテストでは、何ら突然変異原性を示さない。
またインドでは昔から穀物倉にニームの葉を入れてコクゾウムシの被害を防いできたので、インドの人々は何世代にもわたって多少とも日々ニームを食べていたのである。
ニームから作られる製品には人間の健康に役立つものがある。
インドの人々は昔から「噛み棒」を使う習慣があり、これがインドでは白くて健康的な歯の持ち主が多い理由であるといわれている。 インドでは毎朝1本の枝を切り取り、その端を噛んでブラシのようにして歯や歯茎を磨く。 一番人気があるのはニームの木で、これには科学的な根拠があるようだ。 ニームの枝には強力な防腐力を持つ化合物が含まれていることが明らかとなっている。
ドイツでの研究でニームは虫歯予防だけでなく、歯茎の炎症予防と治療に効果があることが証明された。 現在ドイツやインドではニームは人気の高い練り歯磨きの成分として使われている。
種子から絞った油は強烈なニンニク臭がある。 そのままでも熱源や潤滑油として利用できるが、精製すれば不快な臭いは消え、石けんや化粧品、消毒薬として利用されている。
絞り粕の「ニームケーキ」は有機肥料として有用であり、土壌線虫や土壌害虫の被害防止に役立っている。 インド南部のカルダモン生産農家は「ニームケーキ」は市販の線虫防除剤に劣らない効果があるといっている。
これまでに述べたニームの素晴らしい性質は、まだ一部の人々に知られているに過ぎない。 今後さらに新たな発見があったり、研究が進展すればさらに注目を集めることとなろう。
2.ニームの木について
1)特徴 ニームは学名をAzadirachta jndica A.Juss と言いマホガニー科 Meliaceae に属し、英語名はNeem tree として紹介されている。
ニームは美しい広葉の常緑樹で、高さ30メートル、太さ2.5メートルにもなり、まるい樹幹から広がる枝葉直径20メートルにも達する。 幹はまっすぐで樹皮は厚く明瞭な筋がある。 根は地中深く張り、傷ついたときは吸枝が生えてくる。 乾燥した地方では吸枝がとくに多くなる。
ニームは刈り込みに強く、坊主頭になっても生き延びるし、頂部の枝は何度も活発に芽を出す。
小さくて白い花は雌雄同花で腋生えの房に咲く。 また花は蜂蜜のような香りがあり、多くの蜂が寄ってくる。 ニームの蜂蜜は人気があり、アザディラクチンの痕跡は全くないといわれる。
ツルッとした果実は約2センチで楕円形の核果である。 熟すると黄色ないし緑色がかった色となり、甘い果実が種子を包んでいる。 種子は殻と仁からなり、害虫駆除の成分は仁の部分に最も多く含まれている。
ニームが実をつけるのは3〜5年後からで10年で生産力がピークとなる。 その後は毎年50キログラムほどの実をつける。 木の寿命は200年以上にも及ぶ。
2)分布 ニームはアッサムおよびミャンマーが原産地と考えられている。 この地方の中部乾燥地帯およびシワリク山脈一帯に広く分布している。
ニームはインドで最も広く利用されている。 インドではケララ州からヒマラヤ山脈、熱帯から亜熱帯地方、半乾燥地帯から熱帯の湿地帯、海水面から標高700メートルの地帯に分布する。
ニームは20世紀初頭にアフリカに移植されたが、その後世界各地に広げられ現在では少なくとも世界30カ国に定着している。 とくにサハラ砂漠の南端の諸国に多く、燃料と木材の重要な供給源となっている。
ここ100年間にニームはフィジー、モーリシャス、カリブ海地域およびその他中南米諸国にも定着した。 アメリカではフロリダ南部、カリフォルニア南部、およびアリゾナで実験的に植えられている。
3)生育と繁殖 ニームの繁殖は容易である。 種子、苗および若木で増やせるほか組織培養もできるが、普通は種子から繁殖し、実生にしたり苗床で苗木を育ててから移植する。
ニームは低地の熱帯地域ではどこでも成育するといわれるが、概して年間雨量400〜1200ミリの地域で最もよく成育する。
ニームは乾燥した不毛の土地でもよく成育することが知られている。 やせて石ころが多い浅い土壌や、表面のすぐ下に硬い岩盤層があるところでの生育ぶりは、ニームにかなう植物は他にはみられない。 反面湿地には耐えられず土壌が水に浸かるとすぐに枯れてしまう。
ニームの成長は早く、わずか5〜7年で材木用に伐採できる。
雑草がニームの成育を抑制することはほとんどない。 小さな若木のときを除き、ニームはほとんど全ての競争者より優位を占める。
鳥やコウモリやテナガザルが種子を運ぶので、条件さえよければ広範囲に広がる。 また古木からの自然の再生も非常に活発である。
4)ニームの成分 ニームには農薬となる成分を多数含み、多くの害虫から自らを守っている。 これらの化合物は「トリテルペン」という天然有機物に属し、さらに具体的には「リモノイド」である。
【リモノイド】 ニームに含まれるリモノイドで、防虫効果があると分かっているものは少なくとも19種類あり、このうちよく知られていて重要なものはアザディラクチン、サラニン、メリアントリオールおよびニンビンである。
【アザディラクチン】 アザディラクチンは防虫効果の主役である。 即効的に害虫を殺すことはないが、害虫を追い払ったり害虫の成長や生殖を抑制する。 これまでの研究の結果、摂食や成長を抑制する作用が最も高いことが分かっている。 多くの種類の害虫や線虫が摂食できなくなったり、食欲が減退したりする。 その効果は絶大で、アザディラクチンの痕跡があるだけでニームに触りもしない害虫がある。
アザディラクチンの化学構造は「エクダイソン」という昆虫の脱皮や変態を促進する前胸腺ホルモンに似ている。 脱皮や変態が正常に行われるためには、様々なホルモンとその他の生理的な変化がたくみに一致する必要があるが、アザディラクチンはエクダイソンの正常な働きを阻止する作用があると考えられる。 アザディラクチンが作用すると害虫は脱皮できず、やがて死んでしまう。
ニームの仁には平均0.24%のアザディラクチンが含まれている。
【メリアントリオール】 もう一つの摂食抑制物質であるメリアントリオールは、ごく低い濃度でも昆虫が餌を食べなくなる。 インドでは伝統的にニームが防虫剤として使われてきたが、これはメリアントリオールの働きによりバッタが作物を食べなくなるからだ、ということが最近科学的に明らかにされた。
【サラニン】 ニームから取り出された第三のトリテルペノイドはサラニンである。 この物質は研究の結果、摂食を著しく抑制するが脱皮には影響を及ぼさないことが分かった。
移動性のバッタ、アカマルカイガラムシ、コロラドハムシ、マメコガネおよびイエバエなどに対する効果は実験室でもほ場試験でも実証済みである。
【ニンビン、ニンビディン】 ニンビンとニンビディンは抗ウィルス作用のあることが分かっている。 ジャガイモXウィルス、ワクチンウィルス、鶏痘ウィルスなどに作用する。 作物や家畜がかかるこうしたウィルス病を予防する道が開かれる可能性がある。
3.有効な害虫 これまでの研究の結果、ニームエキスは約200種類もの害虫に効果が認められている。
この中には通常の化学農薬では効きにくい害虫も含まれている。 ある種のコナジラミ、アブラムシ、スリップス、コナガおよびハモグリバエなどである。
一般的には作物を食害するほとんどの害虫に作用を及ぼす。
【直翅目(バッタやイナゴなど)】 直翅目にはニームエキスの摂食抑制効果がよく現われる。 この種類ではニームエキスを散布した植物を数日間、ときには数週間摂食しないというものが多い。
最近ある種のバッタではニームエキスが群生して飛翔する形態(群生相)から普通の形態(孤独相)に変える効果があることが明らかにされた。
【同翅亜目】 アブラムシ、ヨコバイ、コナジラミ、キジラムおよびカイガラムシなどは、程度の差はあるがニームエキスに敏感に反応する。 例えばウンカ、ヨコバイの幼虫に対する摂食抑制効果と成長抑制効果は著しい。
ニームエキスは同翅亜目の害虫が持つウィルス媒介能力を抑制することも知られている。
例えばヨコバイが媒介するツングロ(tungro)病を抑制することが明らかにされた。
【異翅亜目】 ニームエキスは稲や野菜やコーヒーなど各種の作物の汁液を吸収するカメムシなどに作用する。 浸透移行性のあるニームエキスが害虫の摂食活動を抑制し成長を妨げる。
【総翅目(スリップス類)】 ニームエキスは地中にいるスリップスの幼虫に非常によく効く。
【鞘翅目(甲虫類)】 すべての甲虫の幼虫、とりわけテントウオムシダマシとハムシの幼虫はニームエキスに敏感に反応する。 ニームエキスを散布した作物は一切食べないし成長も遅くなる。 コロラドハムシのように皮膚が柔らかな幼虫は触れただけで死ぬものもある。
【鱗翅目】 多くの鱗翅目害虫の幼虫はニームエキスに反応しやすい。 事実アワヨトウ、果樹のシンクイムシ、アワノメイガは近い将来ニームエキスの主要なターゲットとなろう。 成長抑制効果ほどではないが、ニームエキスの摂食抑制効果は侮れないものがある。
【双翅目】 ミバエやイエバエなど双翅目にはニームエキスのターゲットになるものが多い。 蚊に対する効果も期待できる。
【膜翅目】 ハバチの幼虫はニームエキスがよく効く害虫である。 この種類ではニームエキスの摂食抑制効果と成長抑制効果の両方の効果が発揮される。
4.試験の事例 ニームエキスの効き目は害虫の種類によって異なる。 いくつかの主要な害虫やその他の生物に対するこれまでの試験結果をまとめてみた。
1)トビイロウンカ ニームケーキ(種子から油分を取った後の残留物)が抜群の効果を発揮するため、フィリピンではトビイロウンカやその他の害虫の駆除に使用されている。
2)アワヨトウ アザディラクチンは1haあたり10mgというごく微量で、アワヨトウに対して防虫効果を発揮する。
またシロナヤガは西半球で作物を加害する最大級の害虫であるが、この害虫がやってくる前にニームエキスを散布することにより、被害を完全に防ぐことができる。 シロナヤガはその畑の前を素通りして過ぎていくのである。
3)アワノメイガ アワノメイガはアメリカやカナダではトウモロコシの大害虫であるが、実験室での試験の結果、アザディラクチンは10ppmで死虫率100%、1ppmでも90%の死虫率を示した。
さらに低濃度(0.1ppm)では、一見したところ幼虫に対して全く何の変化も見られないが、成虫になると性別の割合が大きく変わり(メスよりオスが増える)、生き残ったメスも産卵数が低下したり、産卵が大幅に遅れたりする。 このような効果はアザディラクチンがこの害虫の駆除に効果が高いことを示している。
4)アブラムシ ドミニカ共和国では、ニームエキスがきゅうりやオクラに寄生するワタアブラムシやキャベツのニセダイコンアブラムシに効果があることが実証されている。
しかしながら土壌施用など浸透移行性を利用した使用ではアブラムシに対してほとんど効果が見られない。 その理由はアブラムシが植物の篩部からのみ養分や水分を吸収しており、ニームエキスの成分はこの部分には蓄積されないためと考えられる。(訳者注:ただし散布ではアブラムシに効果がある)
5)ゴキブリ ニームエキスはゴキブリの幼虫を殺し成虫の産卵を妨げる。 ニームエキスを染み込ませた餌をまいておくと、チャバネゴキブリなど3種のゴキブリの成長が抑制されることが分かった。 これらのゴキブリの1齢幼虫は成長が止まり10週間以内にすべて死んでしまう。
最終齢の幼虫も成長が止まり9週間以内に半数が死ぬ。 生き残ったチャバネゴキブリのうち成虫になったのはわずか2%であった。
6)蚊 各種の蚊の幼虫もニームエキスに敏感に反応する。 ニームエキスを処理すると蚊の幼虫は餌を食べなくなり24時間以内に死んでしまう。 ある試験では、つぶしたニームの種子を池に投げ込むだけでmethopreneに劣らない効果があることがわかった。 methopreneは発展途上国が輸入している高価な殺虫剤である。(訳者注:methopreneは一種の昆虫ホルモン様物質の製剤)
7)貯穀害虫 貯蔵穀物の防虫剤としてのニームエキスの可能性は非常に大きい。 これはアジアでは最古から知られている方法で、文献でもその利点がしばしば述べられている。 伝統的な方法では、ニームの葉を3〜6ヶ月間混入する方法である。 ニームの葉に含まれるどの成分が害虫を寄せつけないかは明らかではないが効き目は確かである。
また麻袋にニームエキスを塗っておくと、コクゾウムシやコクヌストモドキの侵入を数ヶ月間防ぐことができる。
さらに豆類の保護にも非常に有効で、処理前に害虫がついていたかどうかに関わりなく、少なくとも6ヶ月間はマメゾウムシを寄せつけない。 この方法は大規模な食糧の貯蔵には向いていないかも知れないが、家庭で使ったり種子の貯蔵にはよい方法であろう。 この処理をしても種子の発芽率には全く支障が見られなかった。
インドではジャガイモを貯蔵するとき、ジャガイモガの防虫にニームが使われている。 少量の粉末を散布するだけでジャガイモの貯蔵期間を少なくとも3ヵ月間延長することができる。
8)センチュウ ニームエキスは様々な種類のセンチュウに効果がある。 ニームの種子に含まれるある種のリモノイドがセンチュウに作用することが分かった。 この成分は100万分の1(ppm)の濃度でセンチュウの幼虫の成育や卵の孵化を抑制する。 ニームケーキを水に溶かしたものも殺線虫効果がある。
インドのアルガリでの試験の結果、ニームケーキを土壌施用するとネコブセンチュウの指数がゼロとなることが分かった。 しかもトマトの成長が他のどの土壌改良剤よりも飛躍的に向上したのである。
ドイツでは温室とほ場の両方で試験が行われた。 ニーム処理区ではトマトの根にはセンチュウがほとんど見られず、その上トマトの成長が著しく改善された。
南インドのカルダモン生産者は昔からニームケーキをセンチュウ駆除のために使っている。 最近の聞き取り調査でも、ほとんどの生産者がこれほどよく効く線虫剤はないと答えている。 彼らはベテランの生産者であって他の害虫駆除には化学農薬を使っており、無知や貧困のためにニームを使っているわけではない。 毎年カルダモンの畑に1haあたり100〜259kgのニームケーキが施用されている。
9)カタツムリ ニームエキスはカタツムリにも作用する。 実験室の試験では水棲のカタツムリ(Biomphalaria glabrata)を殺すことが明らかとなった。 ニームエキスはカタツムリの成虫と卵の両方を殺す。 このカタツムリは住血吸虫性病を引き起す寄生虫の宿主となっており、熱帯地方ではおよそ2億人が住血吸虫性病に感染しているので、ニームエキスはこの風土病の予防手段となることが期待されている。
10)糸状菌 ニームエキスは抗菌性があることは明らかであり、これまでの試験の結果、豆類のRhizoctonia solani 、Sclerotium rolfsii および Sclerotinia sclerotiorum に有効であることが分かった。
ニームケーキを土壌混和するとRhizoctonia solani の成長が完全にストップする。 そのためこの菌は長期間生き残ることができなくなる。
病原菌の発生が認められる前にライラックに散布すると、そのシーズンは全くうどんこ病にかからない。 また温室のあじさいにも有効でうどんこ病の予防には世界的に使われているベンレートよりも効果が高い。
豆類のさび病では、作物がこの病原菌にかかる前にニームエキスを散布すると90%の予防効果がある。 しかしながら一端病原菌にかかってしまうと効果はない。
5.目的外の生物に対する効果 ニームエキスは目的外の生物に対して「ソフト」であることが分かっている。 以下はその事例である。
クモや蝶、花粉を媒介する昆虫、アブラムシを食べるテントウムシ、様々な害虫に寄生する寄生蜂などに対してニームエキスは驚くほど「ソフト」である。 これはニームが効き目を発揮するためには、かなりの濃度が必要なためと考えられる。
植物の組織を餌にする害虫は作用を受けるが、果汁や害虫を餌にする昆虫はニームの高い濃度に触れることがないためであろう。
高濃度のニームエキスを開花した植物に繰り返し散布してミツバチを放飼したところ、働き蜂には何の変化も見られなかった。 働き蜂は花粉や果汁を巣に運び幼虫に与えるが、若齢幼虫では発育が抑制されたが、中齢以上の幼虫の個体数には変化が見られなかった。
フロリダ州の温室試験では、ニームエキスはワタアブラムシやコナジラミの捕食性天敵や寄生性天敵(コマユバチなど)に影響がないことが確認された。 ニームエキスの使用によりこれらの捕食数や寄生数が目立って減っていることはなかったのである。
7ヶ所のほ場を対象にしてアブラムシの天敵数を調査した結果、ニームエキスは捕食性のテントウオムシやクサカゲロウ、寄生虫のヒメバチやコマユバチに影響は見られなかった。 ニームエキスの散布ほ場では無処理区や他の殺虫剤散布区よりも天敵数が多かった。
環境農業新聞の記事より
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